”惹かれる”

人が何かに惹かれるとき、魅了されるとき、それは直観によるものであり、理屈によるものではない。

理屈が登場するのは、理論的な根拠を用いて説明しようとするときが、初めてである。

魅了された瞬間には、そこに一切の理論は、存在しない。

もし理論的に成立していると主張する者があるとすれば、それは既に直観によって魅了されたあとであり、魅了された瞬間を捉え損なっている。

そしてそのことを自覚していないのである。

レ・ミゼラブルにおいて、それは既に指摘されている。

「ただの一瞥ということは、恋の物語においてあまりに濫用されたため、ついに人に信ぜられなくなった。互いに視線を交えたために恋に陥ったということを、今日ではほとんど口にするものもない。しかし人が恋に陥るのは、皆それによってであり、またそれによってのみである。その他はやはりその他にすぎなくて、あとより来るものである。一瞥の火花を交わしながら二つの魂が互いに与え合うその大衝動こそ、最も現実のものである。」

レ・ミゼラブル(3)岩波文庫

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